悪童vs地方政治!県政を倒しダムを築け!?「神様の悪魔か少年 (Style‐F)」

神様の悪魔か少年 (Style‐F)

神様の悪魔か少年 (Style‐F)

前衛っつっても「前衛的」の前衛じゃなくてパーティの先頭に立ってテキストで相手をタコ殴り、みたいな意味での前衛っぽい攻撃型前衛作家・中村九郎氏による初の長編。長いよー。
今回のは少年少女が地方政治と対決してダム建築を推進する話……!? 少なくともラノベじゃない気が、する。
言ってしまえば、いままでの作品と同じく何が書いてあるんだかよくわからない文章。なんだかよくわからないまま、圧倒的になんだかよくわからないイメージを叩きつけてくるという攻撃性はそのままなんだけど、この作品ではさらに、その言葉の奔流のベクトルをある程度おなじ方向に向けることに成功しているっぽい。大雑把に言えば、初めて作品を物語として編もうとしてる。たぶんここが「中村九郎読み」にとって一番の見所なんじゃないかな。
ヤンデレともちょっと違う気がするけど、一緒にいて不安にしかならないヒロインもいい。思春期に異性に対して感じる、近寄りがたい恐怖感、理解不能さがよく出てると思う。
ベッドに横たわる「神様」の足の方向が……のくだりから、鎖骨に垂れる溶けたアイスの描写にいたるあたりの鮮やかさも好き。鮮烈なイメージをここまで高密度で伝えることができるとは!
中村九郎氏作品なのでもちろんオススメしません。