火目の巫女

火目の巫女 (電撃文庫)

火目の巫女 (電撃文庫)

 帝が治める京が首都だった時代の擬似日本を舞台に、絡み合う三人の巫女の運命。うーん、これまた本年度の上位にランクイン間違いなしの面白さ、最近読み甲斐のある作品が多くて嬉しい。あんまりネタバレになるのも気がひけるのですが、骨太で重厚なプロットと「得体の知れないシステムに飲み込まれていく恐怖」というモチーフは諸星大二郎を思わせる稀有な魅力。どろりと濃密な質感の鮮烈な物語を求めるならぜひ一読を。
 寂寥感のあるきれいにまとまったストーリーも秀逸だが、この人は身体感覚に乗せて何かを描写するのがうまいように思えた。身体的イメージを喚起させる鮮やかなテキストがなんとも魅力的だ。
 蛇足だが、秘めやかな激しさと、華々しい痛みを描く姿勢にアリスソフトの臭いを感じたのは私だけだろうか。