アルバム-XL-Recordings The Second Chapter

y05k2006-11-26

XL-Recordings The Second Chapter
1991年 XL Recordings オムニバス


CDレビューのようなものを始めるにあたっては、まずはコレからだろと心に決めていた一枚。
90年代初期、ヨーロッパから始まったハードコアテクノムーブメントの初期段階で起こっていたことを鮮やかに切り取り全世界に伝えた歴史的名盤(ごく一部の人にとっては)。
これ以前にもハードコア指向のテクノは存在していたんだけど、実験的なものやリスニング向けが多かったように思う。しかしヨーロッパのアンダーグラウンドシーンではすでにフロア志向のハードコアが広まりつつあることを、この一枚が初めて世界に伝えたのだ。
オールドスクールハードコア、初期レイブ、デステクノ、などなどのジャンル入門編としてこれ以上のものはないだろう。そこには血肉も感動も魂もない不毛のダンスミュージック的荒野がキミを待っているぞ。
以下トラック評

1 T99/Anasthasia (The Scientist Remix) (5:22)
ワチュガリチャー!ジャスプルマイン!(←未だに何を言ってるのかわからない)
当時最も有名なハードコアテクノだったT-99のアナスタシア。
人間の声を電子的に改変した体に悪そうな紫/緑の駄菓子的な音色を延々と叩きつけられ化学物質を摂取しすぎて吐きそうな状態で膝をかかえつつ鬱々と耐えているようなプチ拷問状態風に仕上げた曲。いま聴くとまったく速くない。一般的に言えばジュリアナテクノ略してジュリテク。
このアルバムには変なリミックスのバージョンで収録されているので、このアルバムで慣れすぎるとオリジナル版をDJで繋ごうとしたときにタイミングが掴みにくい。全国にあと2名ほどいるかもしれないデステクノDJの人は注意が必要だ。ちなみにこのリミックスはブリープテクノの偉い人「The Scientist」が担当。
プルマイン!プププルマイン!

2 Channel X/Rave The Rhythm (4:56)
両手を挙げつつ横に腰フリ系。これもどんどん内面に落ち込みながら鼻息だけが荒くなっていく。
このあたりのChannel Xはバランス良かったと思うんだけど、徐々にチャラい系歌モノ志向になっていくのが残念。

3 Holy Noise/The Noise (5:40)
これも陰鬱。薄っぺらさと荘厳さの共存がいかにもデステクノ的で、ここぞという場で使えば異常にカッコいいような気もする。ただ、あんまりフロア向けじゃないかも。アルバムはオススメ。

4 John & Julie/Circles (G.T.O.'s Europa Remix) (5:19)
呪術的な雰囲気の女性ボイスと危機感を煽る旋律がおどろおどろしい暗黒系デステクノ。改めて聴くとけっこう美しい曲かも、もちろん安っぽいけど。

5 Set Up System/Fairy Dust (4:34)
逆回転っぽい音を主旋律に据えた変態っぽい曲。タイミングさえ良ければシャーマニックな雰囲気で意外とフロアが盛り上がる。

6 External Group/Gravity (5:12)
3曲で消えたテクノユニット。確かにアルバム中最もどうでもいい曲。たぶん808みたいな事をやりたかったんだと思う。音色と展開のマヌケさはややチャーミング。

7 Cubic 22/Night In Motion (5:15)
パーレータッ!
これも1と同じくらい流行ったなぁ。当時のMTVなんかでも(テクノにしては珍しく)よくPVが流れてたので覚えてる人も多いはず。ちなみにボーリング場なんかによくあったレーザージュークにも入ってたのでよくコイン入れて流しました。PVに日本人が出てるのもポイント。
ピアノブレイクへの持ち込み方とそこからの立ち上がりなどが非常にキャッチーで楽しいダンサブルな一曲。
かなり有名な曲だけど、ユニットであるCubic 22はこれ一曲で消滅。とはいえ同じメンバーでSet Up System名義でも活動してたしConvertという名前でもカワイイ系のダンスミュージックを残している。テクノはこうゆう活動スタンスの人が結構いるので困ります。

8 Digital Boy/Gimme A Fat Beat (Frank de Wulf Remix) (4:45)
暑苦しい男声に野太いバカビートが絡むこのアルバムの問題児。若干イタロっぽいけどマイアミ感もアリ。なんかこの曲だけアルバムの中で「テクノの実現しなかった別の進化の方向性」を向いてるんだよね。本人のルックスはどうかと思うけど実は音は嫌いじゃないです。

9 Frequency/Where Is Your Evidence? (5:22)
あーこれもダメだな。暗黒シャーマニズムな雰囲気はよく出てるんだけどフロアで使えなさそうすぎる。あと将来性がまったく感じられないのも。

10 Prodigy/Charly (5:23)
ユクレイジー
ここにきて突然のブレイクビーツ! 初めて聴いたプロディジーがこれだったし、プロディジーの最高の曲もこれだった。レイブというものが求めて止まないネバーランド感が満載。しかもモロにステップ踏ませ系なのでこれをフロアで鳴らすと確実に盛り上がる、ちょっとズルい。ちなみにPVでは「ミャオーワオーワー」のところでチェシャ猫が出てくる。
追記:やっぱ最高の曲はEverybody In The Placeに変更。

11 Incubus/The Spirit (5:02)
地味だなぁ。朝三時でなんとか通用するかしないかのレベル。やっぱりこの人たちも5曲くらい出して消えました。

12 Praga Khan/Rave Alarm (5:18)
レイブ警報発令中! 総員ダンスせよ!
これもアタマ悪そうだなぁ、だがしかしアタマ悪いつつも物悲しさを感じさせる旋律が深夜のクラビングという行為の本質とどこかリンクしているらしく、不思議な郷愁を感じさせる一曲。終わらない夜なんかないからこそ今はここで踊ってんだこの野郎。オーラスに配置するのはこの曲以外ありえなかった。
後に変な女性ボーカルを乗っけた改悪版が流通。プラガカーンは結局そっち方面の人でした。