ジャンクル!

ジャンクル! (ファミ通文庫)
世界という苛烈な地獄のなかで、高みを目指し続ける人間という生き物の弱さ愚かさそして強さ。
前作「ぺとぺとさん」の「萌え以外の部分」にも興味があったので本作を手にとったのだが、期待していた以上のものに出会えたのでかなり満足。
ちなみに萌え含有率は0%。
むせ返るような汗と血と草の匂いを感じさせる圧倒的な生命力の描写が秀逸。秀逸どころか執念的にすさまじいレベルなので、作品そのものがライトノベルという枠を逸脱しているように思った。「妊婦の腹がまるまると迫力をみなぎらせている」(うろ覚えだが)のような描写ができる時点でやはり只者ではない。
「このあたりで終わると文学として素晴らしいだろうなぁ」と想像してたタイミングで終わってくれたのも良い。物語としては「続く」なのだが、むしろ続巻が出ていないこの状態が「弱く愚かでそして強い人類へと贈る寓話」として非常に魅力的に思えるのは私だけだろうか?
ぺとぺとさんから続くテーマとして、混沌の中で生きる人間に対する厳しくも暖かい視線、といったものを感じるが、作者が別名義でパズル製作の仕事も行っていると知り、やや納得。ヒトづきあいを苦手としつつもヒトを愛してやまない人間は、パズル作家になりたがるものなのだ。