ある日、爆弾がおちてきて (ホントはまだ全部よみおわってないけど)

ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)
 乱歩とサイバーパンクをつなぐもの。
本作は短編集なのですが、収録作「恋する死者の夜」に思うところがあったので一筆。ネタバレ含みますが、この小編は「引き伸ばされた永遠の一瞬」の質感を味わうノイズミュージックのような味わい方をすべき作品だと思うのでそんなに問題ないよね。で、なんらかの理由で蘇った死人たちがあふれる世界のお話なんだけれども、そこでは「死人」たちは生前の一日の生活を何度も繰り返すだけの存在、って設定。彼らはある種の痴呆症やアルツハイマー患者のように朦朧かつ幸せそうにその生活をくりかえすのだけれども、かつて恋人であった死者へと向けられる主人公の視線は、徒労感と愛情とフェティシズムとあきらめでできている。はて、この視線の感触はどこかで感じたことがあるぞと思い起こせば、それはかつてサイバーパンクと呼ばれた作品たちの主題のひとつ「人造少女との恋」だった。さらにそれと同じ性質の視線を乱歩もいくつかの作品で描いているように思える。「決して心が届かない、いや、それ以前に生物ですらない少女」へと向けられる視線。この概念を表す、とってもわかりやすい言葉がある。それは「(キャラ)萌え」だ。と、いうワケでこの作品は萌えという概念の本質(の一面)を萌えイラスト付きでなんの因果かラノベ読者に向かって突きつけてしまった問題作なのです。二次元で萌え萌え言ってる俺たちゃこの主人公とおんなじかもよ? 必読。