二四〇九階の彼女 (電撃文庫)

二四〇九階の彼女 (電撃文庫)
都市を内包できるほど広大な円盤状の空間を、1000の単位で積み上げた、想像を絶するメガストラクチャー。その中では各階層がそれぞれ閉じた世界を構築しており、上下階との行き来がほぼ絶えた状態で、人々は生活を営んでいた、自らが住むその構造物がなんであるかすら忘れるほどの永きにわたって。
うーん、想像力をかき立てるいい設定。これだけ見るとヤン・ヴァイスの「迷宮1000*1」という奇SFを思い出すなぁ。
本作は基本的には、どこか懐かしくそして不条理なさまざまな情景の中を、主人公(とカエル)が下へ下へと進む「旅モノ」。雰囲気重視に終始するかと思わせておいて、「世界の外」を目指すという意外とSF的なフロンティア感もアリ。けっこうイイ線いってるとは思うのですが、個人的には設定をもっと活かした超絶的な世界構造のイメージを見たかった。「BLAME!」みたいな。

*1:1000階建てのメガストラクチャーの内部で、記憶を失った主人公が目覚めるシーンから始まる、1929年チェコSF小説サイバーパンクな雑踏のイメージが描かれた世界初の小説(私見)。ちなみに、雑多で怪しげな広告が立ち並ぶ街頭の描写シーンのページがこれ。いい仕事してるなぁ。そういえば「頭の両脇に付けたカメラアイで視覚を補った盲人が、主人公の光学迷彩を見破る」なんてシーンもあった。創元版ではノンブルが1000から始まるのもニクイ。面白いのに絶版。戦前の小説でありながら、ガス室での大量虐殺というシーンがある事でもやや有名。