ルカ―楽園の囚われ人たち

ルカ―楽園の囚われ人たち (電撃文庫)

ルカ―楽園の囚われ人たち (電撃文庫)

 ものすごい「SF感」!
 いわゆる「SF者」たちがライトノベルを書きはじめている、とはよく言われるが、これほどのSF志向を持つ作品には初めて出会った。物語としてやや密度が欲しかった部分もあるが、SFという単語に何かを感じる人はぜひこの「大きさ」に触れて欲しい。かつてのSF読者で、いわゆる「ライトノベル」というものに抵抗がある人にもオススメ。その場合は、初めて与えるのを「ルカ」にして、次に「ハルヒ」を読ませてみたいなぁ。作風としては若干「ジュニア小説」を意識しすぎたような気もするけど、これだけのテーマを小学校高学年でも読めるエンタテインメントにまとめた力量は評価したい。
 作者の作品は「座敷童にできるコト」シリーズから読んでいたが、一巻を読んだ時点で、マクロ的な描写が持つグロテスクなほどの「視点の高さ」に驚いた。まさに「神の視点」とでも呼ぶべき特異なヴィジョンは、なるほど「SF」がルーツにあるのかと納得。